この記事でわかること
✅ ナカジツ様が商品・業務フローをどう整えたか
✅ DXを現場に定着させた方法
✅ 実際に生まれた業務改善効果
✅ 最後に自社チェックあり
住宅事業では、営業、設計、見積もり、仕様決め、施工管理など、さまざまな場面で担当者の経験と判断が求められます。
経験豊富な担当者は大きな戦力です。
しかし、仕事の進め方が人によって異なると、商談の長期化や品質のばらつき、若手育成の遅れを招くことがあります。
この課題に対し、商品設計、品質管理、組織体制、教育、DXを組み合わせて取り組んできたのが、
株式会社不動産SHOPナカジツ様です。
ナカジツ様は、直近約5年間で売上を200億円から480億円へ伸ばし、社員数も約900名まで拡大しました。
この急成長の裏には、誰もが成果を出しやすい仕組みを、現場に合わせてつくり続けてきた事実があります。
本記事では、株式会社不動産SHOPナカジツ 執行役員の杉江純人氏と、経営戦略部 経営企画課の伊藤正樹氏を迎えた
オンラインセミナーをもとに、同社が属人化と向き合い、仕組み化とDXを現場へ定着させてきたプロセスを紹介します。
1. なぜ成長企業ほど「属人化」が課題になるのか

住宅・不動産・リフォームの仕事では、属人性を完全になくすことはできません。
むしろ、すべてをなくそうとすれば、現場の強みまで失うおそれがあります。
同じ建売住宅でも、土地の形状や立地条件は一つひとつ異なります。
リフォームも、建物の状態や顧客の要望によって最適な提案が変わります。担当者が培った経験や提案力は、
他社との差別化につながる大切な価値です。
問題は、経験そのものではなく、判断基準や進め方まで担当者ごとに異なることです。
商談に時間がかかり、顧客が受ける提案やサービスの品質にも差が生まれます。
若手へ知識を伝える際も、マニュアルにしにくい「勘・コツ」が多いほど、戦力化までに時間がかかります。
そこでナカジツ様は、属人性を一律に排除するのではなく、業務を次の2つに分けました。
• 人の経験や提案力を生かすべき領域
• 商品設計、マニュアル、ルール、システムによって標準化できる領域
顧客に向き合い、個別に判断する部分は人に残す。
一方、見積もり、仕様決め、確認、引き継ぎなど、共通化できる業務は仕組みに置き換える。
この切り分けが、ナカジツ様の仕組み化の出発点でした。
この考え方が必要になった背景には、同社の急速な成長があります。
成長を続けるには、優秀な人を増やすだけでなく、経験の浅い社員でも一定の成果を出せる土台が必要でした。
2. ナカジツが進めた「仕組み化」とは

ナカジツ様が目指したのは、単に業務マニュアルを増やすことだけではありません。
商品、組織、品質基準、役割、業務フローを一体で見直し、誰が担当しても一定水準の提案と
施工ができる状態をつくることでした。
フルオーダーから「プロが選んだ選択肢」へ
以前は要望に一から応えるフルオーダー型で、選択肢が多いほど顧客は迷い、営業・施工の確認事項も増えていました。
そこで、プロが選んだ標準仕様とオプションを用意し、顧客が選べる商品設計へ転換しました。
すべてを画一化するのではなく、多くの顧客が求める内容は共通化し、本当にこだわりたい部分には個別に対応します。
選択肢を適切に絞ることで、顧客は選びやすくなり、営業も提案しやすくなります。
施工する商品が整理されるため、注意点や品質基準も社内で共有しやすくなりました。
建築営業25名を10名へ。営業よりも工事体制を厚くする
商品設計とあわせて組織体制も見直し、建築営業25名のうち15名を工事側へ配置転換し、10名へ再編しました。
営業人数を減らすことへの不安もありましたが、施工体制を厚くし、
「品質そのものを営業の武器にする」という方針で再編を進めました。
ナカジツ様では、不動産営業が顧客の窓口となり、土地+注文住宅、建売住宅、中古住宅+リフォームといった
選択肢を横断して提案します。
難易度の高い工事は建築の専門スタッフが支援しますが、基本的には不動産営業が自立して提案できる体制を目指しました。
現在は、不動産営業約250名に対して、建築営業は約10名です。
単純計算では、建築営業1名が約25名の不動産営業を支えることになります。
この人数で多くの案件を動かすには、個別対応を増やすのではなく、商品、見積もり、相談、引き継ぎを
仕組みに変える必要があります。
品質を「誰でも説明できる強み」にする
新築で培った品質管理の考え方をリフォームにも展開し、誰が担当しても一定の品質を保てる仕組みを整え
400項目を超える品質管理マニュアルを整備しました。
工事中の写真や協力業者の作業日報も記録し、リフォームでは1現場で約3,000枚の写真を保存する場合もあります。
これらの記録は施工管理だけでなく、完成後には見えない部分を顧客に共有し、工事への不安を減らすことにも
役立っています。
品質管理を仕組み化することで、営業担当者も「どのように工事が進んだのか」「自社はここまで品質を管理している」を
説明でき、品質そのものが営業を支える強みになりました。
3. DXは「ツールを入れること」が目的ではない

仕組み化を支える手段として、ナカジツ様はさまざまなシステムを活用しています。
しかし、導入当初から順調だったわけではありません。
導入初期は、既存のフルオーダー型の商品や業務をそのままシステム化しようとしたため、例外対応の多いリフォームでは、
システムで処理できない案件に従来の方法も併用する二重運用が発生。現場の負担が増え、約2年間、
十分に活用されない時期がありました。
そこで、既存業務にシステムを合わせるのではなく、商品や業務を先に整理し、システムで扱いやすい形へ転換しました。
全体の約8割を仕組み化し、残りの約2割は個別に対応。
すべてを1つのシステムで完結させず、工程ごとに適したシステムを使い分けています。
同社では、社員1人が日常的に使うシステムが約20種類あるといいます。
一方、システムは導入するだけでは定着しません。
経営側が目的と背景を示し、経営と現場の両方を理解するマネージャーが、
実務に合わせて運用方法や見直すべき業務を整理します。
こうした橋渡しによって、現場で使い続けられる仕組みへ落とし込んでいます。
導入後も、使用率や効果、トラブル、不都合を数値で確認します。
運用開始をゴールにせず、「使われ続ける状態」まで計画することが、ナカジツ流のDXです。
4. 仕組み化によって変わった現場

商品、品質、業務フローを整えたことで、現場には数字で確認できる変化が生まれました。
リフォームの打ち合わせを3〜5回から1〜2回へ
以前のリフォームでは、1回2〜3時間の打ち合わせを3〜5回行い、合計6〜15時間ほどかかる場合がありました。
現在は、プロが商品を厳選したパッケージと事前検討の仕組みを活用し、
打ち合わせを1〜2回で終えられる体制を整えています。
顧客にとっても、大量の選択肢を打ち合わせの場で初めて見せられ、その場で決断を迫られるより、
自宅で家族と相談できる方が落ち着いて検討できます。
打ち合わせの効率化と、顧客の選びやすさを両立した改善です。
新築の打ち合わせを10〜12回から4回へ
注文住宅では、従来10〜12回ほど行っていた打ち合わせを4回に集約する「新築4days」に取り組んでいます。
「外装を決める日」「設備・オプションを決める日」のように、各回で決める内容を明確にし、
スケジュールを事前に顧客と共有します。
顧客も次回までに考えることが分かるため、準備した状態で打ち合わせに臨めます。
年間約2,000件のうち、約半数を対面なしで引き渡し
品質管理を徹底した結果、当初は想定していなかった業務効率化も生まれました。
リフォーム工事では、施工過程の写真や作業日報を顧客へ継続的に共有しています。
完成後には見えなくなる部分も工事中から確認でき、進捗が見えることで、顧客との信頼関係も築きやすくなりました。
その結果、年間約2,000件のリフォーム工事のうち、約1,000件を対面なしで引き渡せるようになりました。
従来は「引き渡しは現地で一緒に確認するもの」という業界の常識がありました。
現在は、顧客が希望する場合や説明が必要な工事には対面で対応し、
それ以外は無理に時間を拘束しない運用へ変えています。
若手が学びやすく、挑戦しやすい環境へ
商品と施工方法が整理されると、若手に教える内容も明確になります。
「この商品は、この手順で施工する」「このパッケージでは、この工事を行う」と基礎を共通化できるため、
経験の浅い社員でも仕事を理解しやすくなります。
ナカジツ様には、挑戦して失敗した人を責めるのではなく、「次にどうするか」を考える文化もあります。
5〜10名程度のチームにリーダーを置き、日常のOJTを通じて、知識だけでなく仕事への姿勢や考え方も伝えています。
社員数約900名に対し、リーダーは100名を超えます。
経営層が全社員へ一度に伝えるのではなく、身近なリーダーを通じて価値観や変化の目的を共有する。
この体制が、若手育成とDX定着の両方を支えています。
5. 仕組みを支えるツールとしての「イエプロ」

では、ナカジツ様が整えてきた仕組みを、実際の業務として運用するうえで、
イエプロはどのような役割を担っているのでしょうか。
イエプロは単に商品を選ぶためのツールではなく、
商品設計から顧客の事前検討、打ち合わせ、金額確認、営業から工事への引き継ぎまで、
仕組み化した業務を一連の流れとして
運用するための共通基盤として活用されています。
顧客が自宅で楽しく検討できる「宿題機能」
打ち合わせ時間を短縮するためには、限られた時間の中ですべてを決めるのではなく、
顧客が事前に検討できる仕組みが必要です。
ナカジツ様では、来店前に標準仕様や選択可能なオプションを確認してもらいます。
ただ「次回までに宿題を終わらせてください」と案内するのではなく、
「限られた2時間の打ち合わせで、これから長く使うキッチンを決めるのは大きな負担です。
ご自宅でご家族と話し合いながら、楽しんで選んでください」と、顧客にとってのメリットを伝えています。
20色の候補を、打ち合わせ前に3色へ
事前検討は、打ち合わせで一から選択肢を絞る時間の削減にもつながっています。
例えば、20色の選択肢から当日に一気に決めるのではなく、顧客が事前に気になる3色へハートマークを付けておけば、
打ち合わせはその3案から始められます。
担当者も顧客の好みを把握した状態で提案できるため、短い時間でも納得感のある決定につなげやすくなります。
プレゼンシートがなければ、工事へ引き継がない
仕組みを定着させるには、ツールを導入するだけでなく、業務の流れそのものに組み込むことも重要です。
ナカジツ様では、イエプロから出力したプレゼンシートがなければ、工事側が案件を受け付けないというルールを設けました。
導入当初は、不動産営業にとって顧客への案内や入力を促す業務が増えたように感じられ、
決めたルールどおりに運用されないこともあったといいます。
そこで、プレゼンシートを次工程へ進むための必須条件とし、建築営業が不動産営業へ利用状況を確認。
徐々に「やらなければ次へ進めない業務」として定着し、新築では1〜2年をかけて、ほぼ100%運用できる状態になりました。
つまり、イエプロを導入しただけで、打ち合わせ時間が自動的に短くなったわけではありません。
商品と選択肢を整理し、顧客が事前に検討できる流れをつくる。営業から工事へ渡す情報を統一し、
利用しなければ次工程へ進めないルールを設ける。
こうした業務設計と組み合わせることで、イエプロはナカジツ様の「仕組み化した業務を実際の運用に乗せる共通基盤」として機能しています。
6. 自社の業務を見直すためのチェックポイント

ナカジツ様の取り組みには、同社の規模や組織文化があってこそ実現できた部分もあります。
一方、属人性を残す業務と標準化できる業務を分け、商品、ルール、システムを一体で見直す考え方は、
企業規模にかかわらず応用できます。
自社の状態を、次の項目で確認してみてください。
顧客が自宅で楽しく検討できる「宿題機能」
✅ 人の経験を生かすべき業務と、共通化できる業務を分けられているか✅ 見積もり、仕様決め、確認、引き継ぎが担当者任せになっていないか
✅ ベテランの勘・知識に頼らなければ進まない業務が増えていないか
商品・選択肢の設計
✅ 顧客にすべてを一から選ばせる提案になっていないか✅ 標準仕様とオプションの違いが分かりやすく整理されているか
✅ 選択肢が多すぎて、顧客や担当者の負担を増やしていないか
✅ 多くの顧客が求める商品を、プロの視点で厳選できているか
品質管理と情報共有
✅ 営業担当者が自信を持って説明できる品質基準があるか✅ 施工時の確認項目がマニュアルやチェックシートになっているか
✅ 完成後に見えなくなる部分を、写真や記録で顧客と共有できているか
✅ 営業、設計、工事の間で、同じ情報を確認できているか
システム導入と定着
✅ 「便利そうだから」という理由だけでシステムを導入していないか✅ どの業務の、どの工程を改善するのか説明できるか
✅ システムを使わなくても、従来どおり次工程へ進める状態になっていないか
✅ 誰が利用を促し、誰が確認し、誰が次工程を受け取るのか明確か
✅ 導入後の使用率、打ち合わせ時間、ミス、手戻りを確認しているか
✅ すべてをシステム化しようとせず、個別対応する範囲を決めているか
数の項目に当てはまる場合、課題は担当者個人の能力ではなく、商品設計、業務フロー、役割分担、情報共有の
仕組みにあるかもしれません。
ナカジツ様も、最初からすべてが順調だったわけではありません。
現場の負担を増やした時期や、システムが使われなかった経験を踏まえ、商品と業務を見直しました。
そのうえで利用ルールを整え、少しずつ現場へ定着させてきました。
DXは、システムを導入した瞬間に完成するものではありません。
人、商品、業務、教育、ルールを整え、現場で使われ続けて初めて成果につながります。
まとめ
ナカジツ様が売上480億円規模へ成長する過程で進めてきたのは、ツールの導入だけではありません。
✅ 属人性を残す領域と、標準化する領域を分ける
✅ 顧客が選びやすく、現場が再現しやすい商品をつくる
✅ 品質基準を、営業・工事・顧客が共有できる形にする
✅ システムに合わせて業務を整理し、利用ルールを設ける
✅ 経営、マネージャー、現場が、それぞれの役割を担う
✅ 使用率や効果を確認し、導入後も改善を続ける
これらを同時に進めた結果、打ち合わせ時間の短縮、品質の向上、若手育成、情報共有の
標準化が実現しています。
その中でイエプロは、顧客の事前検討から仕様決め、金額確認、営業から工事への
引き継ぎまでをつないでいます。
業務改善のために最初に行うべきなのは、ツール探しではありません。
まずは属人化を解消したい。
若手でも成果を出せる体制をつくりたい。打ち合わせや見積もりの時間を短縮したい。
自社のどの業務を、どのような状態へ変えたいのかを整理することです。
ナカジツ様の事例が、自社の業務と仕組みを見直すきっかけになれば幸いです。




