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マンションリフォームの注意点|管理規約・共用部分の範囲と管理組合への申請・提案のコツ

マンションリフォームは管理規約の確認から

戸建てと同じ感覚で「この壁を抜いて広いリビングに」と提案したところ、その壁が撤去できない耐力壁だった。マンションリフォームで起こりがちな失敗です。

マンションには、管理規約・構造・近隣関係という戸建てにはない制約があります。住まいるダイヤル(公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター)の「住宅相談統計年報2026」によると、2025年度の電話相談のうち分譲マンションとみなした相談では、相談区分は「リフォーム相談」が53.2%と最も多く、トラブルの相手方も「リフォーム業者」が47.4%で最多でした。制約を理解しないまま提案・工事を進めると、管理組合とのトラブルや近隣からの苦情、工事の中断につながりかねません。

本記事では、国土交通省の「マンション標準管理規約」(令和7年10月改正)をもとに、専有部分と共用部分の境目、管理組合の承認や届出が必要な工事、見積書・契約書に書いておく条件を整理し、制約の中で最適な提案をするためのポイントをまとめます。

専有部分と共用部分の境目を押さえる

マンションの住戸は「専有部分」と「共用部分」に分かれ、区分所有者が工事できるのは原則として専有部分です。境目は各マンションの管理規約で決まっており、国土交通省のマンション標準管理規約では次のように定めています(第7条)。

  • 天井・床・壁は、躯体部分を除く部分が専有部分
  • 玄関扉は、錠と内部塗装部分だけが専有部分
  • 窓枠と窓ガラスは、専有部分に含まれない

床スラブや界壁などの躯体、パイプスペース、バルコニーは共用部分です。配管も、給水管は本管から各住戸のメーターまで、雑排水管と汚水管は配管継手と立て管が共用部分とされています(別表第2)。バルコニー・玄関扉・窓枠・窓ガラスは、共用部分のまま各住戸が専用に使う「専用使用部分」の扱いです(別表第4)。

図1 専有部分と共用部分の区別

専有部分(区分所有者が工事)

  • 天井・床・壁の躯体を除く部分
  • 室内の内装・設備
  • 玄関扉の錠と内側の塗装

共用部分(管理組合が管理)

  • 床スラブ・界壁などの躯体
  • 窓枠・窓ガラス・玄関扉
  • バルコニー
  • 共用の立て管

標準管理規約の例。実際の範囲は各マンションの管理規約で確認する

見落としやすいのが窓と玄関扉です。居住者が毎日使う場所ですが共用部分に当たるため、「窓を替えて断熱性を上げたい」という要望にそのまま応えられるとは限りません。標準管理規約では、窓枠・窓ガラス・玄関扉などの開口部の改良工事のうち、防犯・防音・断熱などの性能の向上につながるものは、管理組合が計画修繕として実施するとしています(第22条第1項)。管理組合がすぐに実施できない場合に限り、区分所有者が理事長に申請して承認を受け、自分の責任と負担で実施できるという定めです(同条第2項)。

施主様の要望が窓の断熱であれば、管理組合の計画修繕の予定を確かめるとともに、専有部分の側で断熱を補う内窓などの方法も検討します。内窓の設置も管理規約や細則で申請や届出の対象になっていることがあるため、事前の確認が欠かせません。

そのうえで、各マンションの管理規約と使用細則を必ず確認します。工事の申請・届出の要否、工事ができる時間帯、床材の遮音性能、水回りの位置変更の可否など、リフォームのルールは管理規約と細則で定められています。規約は現地調査の前に施主様を通じて入手し、確認する項目をチェックリストにしておくと、調査当日の見落としを防げます(リフォームの現地調査チェックリスト)。同じ要望でもマンションごとに答えが変わる、というのがマンションリフォームの大前提です。

構造と水回りの制約

構造で決まる間取り変更の自由度

構造壁の扱い間取り変更の自由度
ラーメン構造ほとんど動かせる高い
壁式構造動かせない壁が多い低い
混在物件により異なる中程度

標準管理規約のコメントでは、区分所有法第6条第1項により、専有部分の増築や建物の主要構造部に影響を及ぼす行為はできないとしています。壁式構造のマンションでは、耐力壁となっている壁を取り除けないため、間取り変更の自由度が限られます。間取り変更の要望を受けたら、プランを描き始める前に構造形式と図面を確認し、どこまで応えられるかの見通しを立てておきます。

水回りは配管経路で決まる

給排水管は共用の立て管に接続する必要があり、床下の構造によって配管経路の変更には制限があります。キッチン・浴室・トイレの位置を大きく動かす場合は、排水勾配の確保と配管の取り回しが課題になります。

床下に配管を通せる二重床か、床材を直接張る直床か、排水管が床スラブの下を通っていないかで、動かせる範囲は変わります。「水回りは動かせますか」という質問には、図面と現地の両方を確認してから答えるのが安全です。

標準管理規約の別添2では、給排水管を改修する工事(給排水管の改修を伴う浴室の改修などを含む)を理事会の承認が必要な工事とし、承認の条件として、排水勾配が確保されていること、給排水管に防音対策が講じられていること、高圧洗浄用の掃除口があることなどを挙げています。提案の段階から、これらを満たす計画にしておくことが大切です。

工事範囲の4つの選択肢

施主様の要望と予算に応じて、工事範囲を段階的に示せるようにしておきます。

  • スケルトンリフォーム:内装・設備・間仕切り壁を解体し、躯体だけにして作り直す。間取りを大きく変えられる反面、工期と費用が大きい
  • 水回り一新:キッチン・浴室・トイレ・洗面の設備を更新する。既存の位置のままなら難易度が低く、費用対効果が高い
  • 内装一新:クロス・床材の張り替えが中心。住まいの印象を一新しつつ費用を抑えられる。床材は管理規約や細則の遮音性能を満たすものを選ぶ
  • 部分補修:気になる箇所だけを改修する。初期費用を抑えたい場合に向く

「全部やるか、やらないか」の二択ではなく段階で示すことで、施主様は予算との折り合いを付けやすくなります。

管理組合の承認と届出が必要な工事

標準管理規約では、専有部分の修繕や模様替え、設備の取付け・取替えのうち、共用部分やほかの住戸に影響を与えるおそれのあるものは、あらかじめ理事長に申請し、書面(または電磁的方法)による承認を受けなければならないとしています(第17条第1項)。コメントでは具体例として、床のフローリング、ユニットバスの設置、主要構造部に直接取り付けるエアコンの設置、配管の枝管の取付け・取替え、間取りの変更などを挙げています。

承認が要らない工事でも、工事業者の立入りや資機材の搬入、騒音・振動・臭気などがあるものは、事前に理事長へ届け出ることになっています(同条第7項)。別添2が示す考え方を整理すると、次のとおりです。

区分工事の例確認されること
理事会の承認が必要床材を張り替える工事新築時と同等以上の遮音性能があるか
理事会の承認が必要給排水管を改修する工事(浴室の改修などを含む)排水勾配、防音対策、高圧洗浄用の掃除口、共用の立て管との接続
理事会の承認が必要大規模なリフォーム工事、躯体への穴あけやアンカーボルトの打込みはつりや穴あけで躯体に悪影響を与えないか
理事会の承認が必要窓・玄関扉を今と異なる部材にする工事色彩・形状・位置、防犯・防音の性能が下がらないか
事前の届出が必要工事業者が出入りする工事、騒音・振動が出る工事工事の時間・内容・業者名の届出、工事期間と内容の掲示
どちらも不要電球、水道のパッキン、シャワーヘッド、温水洗浄便座の取替えほかの住戸への影響がない

これは標準管理規約が示す考え方の例で、実際のルールはマンションごとの管理規約と使用細則で決まります。床材の遮音性能について、標準管理規約のコメントは、構造や工事の仕様、材料などで影響が異なるため専門家への確認が必要だとしています。細則で遮音等級が指定されていれば、それを満たす床材から提案します。

図2 着工までの流れ

規約・細則の確認

現地調査と併せて

申請書の提出

設計図・仕様書・工程表

理事会の決議

承認か不承認かを決定

近隣への周知

工事期間と内容を掲示

着工

共用部分を養生

理事会の開催日から逆算して工程を組む

申請書には、設計図・仕様書・工程表を添付します(第17条第2項)。承認か不承認かは理事会の決議で決まるため(同条第3項)、理事会の開催日によって着工できる日が変わります。契約時の工程表には申請から承認までの期間を織り込み、施主様にも伝えておきましょう(リフォーム工事の工程管理)。承認には、床材の遮音性能や工事の時間帯、共用部分の養生などの条件が付くことがあります。

理事長やその指定を受けた者は、必要な範囲で工事の箇所に立ち入って調査できます(同条第5項)。承認を受けずに工事をした場合や、申請と異なる工事をした場合は、是正の勧告や工事の差止め、原状回復などの措置の対象になります(コメント第17条関係)。

近隣への対応も戸建て以上に重要です。工事前に両隣・上下階・向かいの住人へ挨拶し、工期・作業時間帯・連絡先を伝えます。マンションの工事音は壁・床・天井を通じて伝わり、とくに上下階には直接響きます。標準管理規約のコメントでも、騒音・振動が出る工事は、ほかの区分所有者が分かるよう工事期間と工事内容を掲示するとしています。管理人・管理会社とも、搬入搬出の時間帯・エレベーターの使用・共用部分の養生を細かく調整しておきましょう。

搬入搬出と費用構造の特殊性

マンションでは、エレベーターの大きさによって搬入できる設備・建材が制限されます。大型のシステムキッチンや浴槽はエレベーターに入らない場合があり、階段での手運びになると、高層階では大きな制約になります。

共用部分の使用時間に決まりがあれば、搬入搬出の時間帯も限られます。現地調査の際は、住戸内だけでなく、エレベーターの寸法や搬入経路まで確認しておきましょう。

こうした事情は費用にも表れます。搬入搬出の人手と時間、共用部分の養生、承認を待つ期間を含めた工期、管理規約への適合、近隣への告知。戸建てにはない費用の要因を見積の段階から織り込み、内訳として説明できるようにしておくと、「なぜ戸建てより割高なのか」という疑問に根拠を持って答えられます。

見積書・契約書に書いておく条件

マンションリフォームの見積書・契約書には、戸建てにはない前提条件を書いておきます。標準管理規約では、承認を受けた工事の後に共用部分やほかの住戸に影響が出た場合、工事を発注した区分所有者の責任と負担で必要な措置をとるとしています(第17条第6項)。コメントでは、工事業者と協議したうえで、事後的な影響が生じた場合の責任の所在と補償などを契約書に明記することが適切だとしています。

  • 管理組合の承認を前提とすること、承認の条件で仕様や金額が変わる場合の扱い
  • 工事ができる曜日・時間帯と、それに合わせた工期
  • 搬入経路・エレベーターの使用・共用部分の養生の範囲
  • 工事の後にほかの住戸や共用部分へ影響が出た場合の責任の所在と対応
  • 工事完了の報告と、施工中の写真記録の提出

コメントは、管理組合が修繕の記録を保管するために工事業者から工事完了報告書を出してもらうことや、施工状況を確かめるために工事業者に写真などの記録を取って報告してもらうことにも触れています。解体後の躯体や配管など、隠れる前の状態を撮っておく運用は、管理組合への報告にもそのまま役立ちます(リフォームの施工品質を安定させる標準化)。前提条件を見積書に書く考え方は、追加工事トラブルを防ぐ見積書・契約書の書き方でも解説しています。

提案時の3つの心得

1つ目は、できること・できないことの早期明示です。管理規約や構造の制約で実現できない要望は、施主様の期待が膨らむ前に伝えます。

2つ目は、代替案の提示です。「窓サッシの交換は管理組合の判断になりますが、内窓で断熱を補う方法があります」のように、要望の目的に立ち返った代替案を添えると、「できません」で終わる話が前向きな提案に変わります。

3つ目は、現地調査の徹底です。同じマンションでも、部屋の位置や階数によって条件が異なります。構造・配管・共用部分の使い方を現地で確認する精度が、提案の精度をそのまま決めます。

よくある質問

窓サッシや玄関ドアは、リフォームで交換できますか?

標準管理規約では、窓枠・窓ガラス・玄関扉(錠と内側の塗装を除く)は共用部分です。防犯・防音・断熱などの性能を上げる改良工事は管理組合が計画修繕として実施するのが原則で、管理組合がすぐに実施できない場合に、区分所有者が理事長の承認を受けて自分の負担で実施できるとされています。まず管理規約と細則を確かめ、内窓のように専有部分の側でできる方法もあわせて提案しましょう。

管理組合への申請には、何をそろえればよいですか?

標準管理規約では、設計図・仕様書・工程表を添付した申請書を理事長に出し、理事会の決議で承認か不承認かが決まります。様式や添付書類は、マンションごとの細則で定められていることもあるため、管理会社に確認します。申請するのは区分所有者である施主様なので、書類づくりをどこまで手伝うかも事前に決めておくと安心です。

フローリングへの張り替えはできますか?

標準管理規約では、床材を張り替える工事は理事会の承認が必要な工事とされ、新築時と同等以上の遮音性能を確認することが承認の条件の例に挙げられています。管理規約や細則で遮音等級が指定されていることもあるため、指定を満たす床材を選び、仕様書で性能を示せるようにしておきます。

まとめ

マンションリフォームには、専有部分と共用部分の区別、管理規約と使用細則、構造と配管、理事会の承認と届出、近隣への配慮、搬入搬出という、戸建てにはない制約が重なります。裏を返せば、これらを熟知して段取りできること自体が差別化になります。

制約を先回りして説明し、できない要望には代替案を添え、承認の前提や影響が出た場合の責任を見積書・契約書に書いておく。その積み重ねが管理組合や近隣とのトラブルを防ぎ、「マンションに強い会社」としての信頼につながります。標準管理規約の本文とコメントは、国土交通省の「マンション標準管理規約(単棟型)」で確認できます。

マンションの提案をその場で形にする「イエプロ」

マンションリフォームでは、管理規約の条件に合う商品から選んでいただくことが提案の出発点です。イエプロは商品選択画面のカテゴリを自由に登録できるため、遮音性能の指定を満たす床材など、マンションで提案しやすい商品をひとつの枠にまとめて並べられます。画面にない商品を自由に入力することもできます。

見積書の特記事項はお見積りごとに変えられるので、管理組合の承認を前提とすることや、作業できる時間帯などの条件を書き添えられます。見積書やオリジナルデータシートは自動で作成され、紙のほか、QRコードやURLでもお施主様にお渡しできます。詳しくは資料請求(無料)からご確認ください。

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