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日本の空き家問題。放置が生むリスクと、負の遺産を資産に変える対策

総務省統計局の「2023年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家は約900万戸に達し、空き家率は過去最高の13.8%を記録しました。この30年間で空き家の数は約2倍に増えており、2030年には空き家率が30%を超えるとの民間予測もあります。

空き家の多くは相続をきっかけに生まれ、「いつか片付けよう」という迷いのまま放置されがちです。本記事では、空き家が増え続ける理由と放置のリスクを整理し、実家を負の遺産にしないための対策を紹介します。

なぜ空き家は増え続けるのか

空き家が増える背景には、社会構造の変化と相続の問題が絡み合っています。主な原因を見ていきましょう。

人口減少と都市部への人口集中

日本では人口が減少する一方、住宅の総数は増え続けています。高齢者世帯の施設入所や死亡で空き家が生まれるペースに、新たに家を必要とする若年層の数が追いついていません。

若年層は仕事や利便性を求めて都市部へ移り、地方には親世代の持ち家だけが残ります。都市部で暮らす子世代にとって遠方の実家は管理が難しく、買い手や借り手も見つからないまま空き家になっていきます。

空き家取得の半数以上は相続

国土交通省のデータによれば、空き家取得の経緯の約55%は相続によるものです。誰が継ぐのか兄弟姉妹で意見がまとまらない、売りたい人と残したい人で話が進まないといった事情から、「とりあえずそのまま」という選択がなされがちです。

煩雑な登記手続きが後回しにされたり、相続人全員と連絡が取れず手続きが中断したりするケースもあります。

「更地は損」という税制の誤解と新築信仰

家が建っている土地は、住宅用地の特例で固定資産税が最大6分の1に減額されます。このため「更地にすると税金が上がる」といわれ、老朽化した建物でも残すほうが得だと考えられてきました。

しかし2023年の法改正により、管理不全な空き家は特例の対象から外れる可能性があります。また、日本では建物の価値が築20〜30年でほぼゼロとみなされる新築信仰が根強く、「価値がない」と思い込まれた物件が市場に出ないまま放置される一因になっています。

空き家の放置がもたらすリスク

空き家をそのままにしておくのは、問題の先送りにすぎません。時間の経過とともに、所有者は物理的・経済的・法的なリスクを負うことになります。

図1 空き家を放置すると何が起きるか

放置・管理不全

換気されず、劣化が一気に進む

老朽化と環境悪化

倒壊の恐れ・害獣害虫・悪臭

「特定空家」等に指定

勧告で住宅用地の税優遇が解除

負担が最大化

固定資産税は最大6倍・過料・代執行も

放置期間が長いほど、選べる対策は減っていく

人が住まなくなった家は換気されずに湿気がたまり、シロアリの発生や構造材の腐朽が急速に進みます。台風や地震で剥がれた外壁材や屋根材が隣家や通行人を傷つければ、所有者が損害賠償責任を問われかねません。人の気配のない家は不法投棄や放火、不法占拠の標的にもなりやすく、害獣・害虫の繁殖や悪臭は近隣トラブルの火種になります。

経済面の負担も続きます。誰も住んでいなくても固定資産税や都市計画税、管理費、火災保険料などの出費は積み重なり、10年、20年では数百万円単位になります。劣化が進んでからでは修繕費が売却価格を上回り、買い手がつかない事態にもなりかねません。

さらに、管理されていない物件は「特定空家」や「管理不全空家」に指定される恐れがあります。勧告を受けると住宅用地の特例が解除され、土地の固定資産税は最大6倍に跳ね上がります。改善命令に従わなければ50万円以下の過料が科され、行政代執行で建物が解体されれば、費用は全額所有者に請求されます。

空き家を資産に変える4つの選択肢

対策の基本は、立地や築年数、自身の将来設計に合わせて、出口を早めに決めることです。代表的な選択肢は次の4つです。

図2 空き家の4つの出口

売却

  • 仲介・買取・空き家バンク
  • 維持負担から解放

活用

  • 賃貸・民泊などへ転用
  • 収益を生む資産に

管理

  • 管理サービスや定期訪問
  • 将来の選択肢を残す

解体

  • 更地にして土地活用
  • 指定・増税リスクを回避

立地・築年数・将来設計に合わせて早めに出口を決める

売却する

今後住む予定がないなら、売却が最も確実な解決策です。市場価格で売りたい場合は仲介、短期間で現金化したい場合は買取を選びます。地方の物件でも、自治体が運営する空き家バンクを使えば移住希望者とのマッチングが期待できます。

収益物件として活用する

建物がしっかりしているなら、リノベーションで新たな価値を与える道もあります。住宅として貸し出すほか、シェアハウス・民泊・カフェ・サテライトオフィスなど、地域のニーズに合わせた転用も注目されています。外装の塗り替えや防水対策を行えば、建物の印象と寿命を大きく改善できます。

将来に備えて管理する

自分や家族が住む可能性があるなら、適切な管理を続けましょう。空き家管理サービスを利用すれば、月額数千円から数万円で通風・通水・清掃などを代行してもらえます。自分で管理する場合も月1回程度の訪問は欠かせません。雨漏りや金属部のさびは放置すると致命的なため、早期発見・早期修繕が将来の修繕費を抑える鍵です。

解体して更地にする

老朽化が激しく修繕が難しいなら、解体も一つの方法です。更地にすれば駐車場や資材置き場など、建物があるままでは難しかった活用ができます。解体には数百万円かかりますが、特定空家指定による増税や強制執行のリスクと比べれば、将来への先行投資と捉えることもできます。

知っておきたい法規制と支援制度

国や自治体は、放置を防ぐ規制と、空き家の解消を後押しする支援の両面から制度を整えています。骨子は次のとおりです。

制度骨子
空家対策特別措置法の改正特定空家の一歩手前の「管理不全空家」も指導対象に。勧告で税優遇が解除
相続登記の義務化(2024年4月〜)取得を知った日から3年以内に登記。怠ると10万円以下の過料も。過去の相続にも適用
自治体の補助金・助成金解体費の一部助成(数十万〜百万円程度)や、賃貸・移住者向け改修の費用支援
譲渡所得の3,000万円特別控除相続した空き家の売却で要件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円を控除

補助金は予算枠が埋まり次第終了となる例も多く、年度初めの確認が大切です。3,000万円特別控除は適用条件が細かいため、判断に迷う場合は専門家に相談しましょう。

家族会議で「放置空き家」を防ぐ

空き家問題の多くは、相続が発生してから悩み始めることで長期化します。最大の予防策は、親が健在なうちに、家族で家の未来を共有しておくことです。

まず、実家の名義が亡くなった祖父母のままになっていないか、共有名義になっていないかなど、権利関係を確認します。

そのうえで、「誰かに住んでほしいのか」「売却して老後資金に充てたいのか」といった親の本心を尊重しながら話し合いましょう。認知症などで判断能力が低下すると、不動産の売却や契約ができなくなる資産凍結のリスクがあるため、元気なうちの意思確認が子世代の負担を減らします。

誰が家を引き継ぎ、誰が預貯金を受け取るのかを遺言書で明確にしておけば、遺産分割協議での争いも防げます。親と一緒に不用品を処分しておくことも、将来の管理や売却のハードルを下げる有効な準備です。

まとめ

空き家の放置は、劣化や近隣トラブル、税負担の増加といったリスクを積み上げ、資産価値を静かに目減りさせていきます。法規制の強化により、「そのままにしておく」ことの代償はかつてなく大きくなりました。

売却・活用・管理・解体という出口を早めに決め、支援制度を上手に使えば、空き家は再び価値を生む資産に変えられます。大切な思い出が詰まった実家を負の遺産にしないために、まずは現状の確認と家族での話し合いから始めてみませんか。

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